ベルサイユ宮殿、プチ・トリアノンの英国風をもう少し追ってみたいと思います。
まずは「愛の神殿」から
12本のコリント式の列柱の中に少年の像。この少年は女王の恋人を象ったもので、居間から眺められる位置に置かれたとも言われています。
そしてこの周りの緑と小川。不規則は曲線を描きながら流れる小川と、同じ様に柔らかな線形の園路。そして緑の茂みの中に、アイボリーの建物が見え隠れしながら庭の添景として存在する風景。まさに英国風形式庭園の特徴とも言える風景となっています。
曲線に延びる小川は小池へと流れ込み、そのほとりには物見台(ベルヴェデール)と岩山があります。岡崎文彬氏の「ヨーロッパの造園」によれば、この物見台の下の池に突き出た岩にマリー・アントワネットが腰掛けていた時(1789年10月5日の昼下がり)、ベルサイユに向けてパリの暴徒が押し寄せてくるという注進をうけたとあります。
そしてその物見台の横にはスイスの風光を表す意図の「かたつむりの丘」という人工の岩山があります。こういった岩山や洞窟なども、英国の風景式庭園の中のデザイン要素として見られるグロットとも呼べる趣向だと思います。
写真を撮ってしばらくしたら、水が流れ出しました。人工といっても自然石を、イレギュラーに折り重ねて、自然風に見せているところが面白いところ。
そして「カタツムリの丘」からの眺めがこれ。池の汀線の曲線が美しい。これも、まさに「絵に描いた様な」というPicturesqueという言葉がピッタリの風景だと思います。